ハリウッド

 映画の都(みやこ)、ハリウッド。夢の工場、ハリウッド。1930年代と1950年代、2度にわたる黄金時代を歴史に残す、ハリウッド。
 この地名は、柊(ひいらぎ)の林があったことに由来していて、この柊の、Hollyというスペルを、Holyにかけたのが、日本での漢字表記になった“聖(セイント)なる林”という書き方。でも、その実体は、夢や栄光ばかりではなく、悪夢や狂気にも彩(いろど)られていたことは、すでに公然の事実。
 ところで、ハリウッドで初めての映画撮影が行われたのは1907年のこと。ロサンゼルスのダウンタウン7番街と8番街の間にあるオリーヴ・ストリートの中国人の洗濯屋の建物だった。当時はまだ、シカゴやニューヨークが映画の中心で、裁判問題をかかえた映画会社の撮影隊が、遠く西海岸まで逃げるようにしてやって来て、作りかけの「モンテ・クリスト伯」を撮ったという。
 降雨量が少なく、一年中太陽の光がふりそそぐカリフォルニアでの撮影が、いかに快適だったかは、すぐに東部へも伝わった。そして、1800年代の金鉱発見に次ぐ、カリフォルニアへのゴールド・ラッシュが始まる。
 撮影所ができて、映画会社が集まれば、映画を仕事にする人々もやって来る。監督やスターだけではなく、エキストラも小道具も、植木屋も化粧品屋も、国内ばかりか外国からの移民たちも、およそありとあらゆる人々が、映画という不思議な芸能・芸術のまわりに。
 そして、いまでは、ハリウッド映画といっても、ハリウッドで製作された映画とは別に、どこで作られたにせよ、ハリウッドがテーマの映画だったりする。



NEXT [ウッドストック]