専門的な内容なので興味のある方だけご覧下さい。

 
 トライトーン(tri tone)とは音楽用語で3全音、あるいは3全音音程のことをいいます。
 たとえば、C(ド、以下同)の音の全音(1音)上の音がD(レ、以下同)その全音上がE(ミ、以下同)、そしてEF(ファ、以下同)の間が半音しかないためEの全音上はF#となり、つまりCから全音3つ分上の音F#までの音程(音と音の間隔)が3全音=トライトーンとなるわけです。
 この音程は増4度音程ともいいます。これはKey in C(ハ長調、以下同)のCを基準とした場合、音階の1番目の音(1度)Cと4番目の音(4度)Fの間の音程を完全4度というのに対し、それより半音分間隔が広いため増4度と呼ぶのです。
 次にF#を基準にして考えてみると、全音上がG#(ソ#、以下同)、2全音上がA#(ラ#、以下同)となり、3全音上の音はB#(シ#、以下同)、すなわち(BCの間は半音しかないため)オクターブ上のCとなります。つまり、1オクターブというのはふたつのトライトーンが重なってできており、トニック(根音/音階の始めの音)とトライトーンの音程関係を作る音(Key in Cの場合だとF#)はオクターブのちょうど真ん中、中心に位置しているということができます。そしてトライトーンの関係を作るふたつの音(たとえばCF#)はどちらが上になっても下になってもその関係は変わらないのです。

 さて、このトライトーン=増4度の音程が作りだす響きですが、これが非常に不協というか不安定な印象をひとに与えます。そしてこの不安定さが音楽的にとても重要な役割を果たしているのです。
 たとえばKey in Cの場合、G7というコード(和音、以下同)を見てみると構成音は下からGBDFなのですが、この内のBFの間がトライトーンを形作っています。このことは、このコードが非常に不安定な響きを内在しているということができ、この不安定さが安定を求めるとき、Fは半音下のEへ、Bは半音上のCへ解決したくなります。つまりCEG(ドミソ)の音で構成されているコードCに向かうことが最も自然な流れとなるわけで、このことがV7th(ドミナント7=属7)からI major(トニック・メジャー)へと移行する最も基本的なコード進行であるドミナント・モーションを決定づけているのです。
 

 そしてこのFBによるトライトーンを含む7thコードがもうひとつあります。それがDb7です。もちろんこのコードはKey in Gbのトニック・コードであるGbに解決するのが最も自然なのですが、同時に上記の関係でCにも解決することができます。このことからKey in CのV7th、G7の代理コードとしてしばしば用いられているのです。
 

 さらにもうひとつ。もうお気づきかも知れませんが、このふたつのコードのトニック音であるGDbの間にもトライトーンの音程関係が成立しているのです。
 

 以上、トライトーンのお話でした。